Albóndigas(アルボンディガス、肉団子)

 大学1年のスペイン語の授業に当時は最先端といわれたLLブースでヘッドフォンとマイクをつけた授業があり、その教材でランチにalbóndigas(肉団子)を食べるやりとりの会話の場面で、担当のスペイン人教授がアルボンディガスの「ボン」のところを爆発するように発音するのがなぜか妙に面白くてこの単語がしっかりと記憶に残りました。
 日本で肉団子といえば中華料理にありますがあまり好きになれず、肉団子は私にとって悪いイメージでした。しかし、スペインでイメージががらりと変わりました。スペインでは、バルに入るといろいろな種類のtapas(タパス、小皿のつまみ料理)がカウンターの上に並べてあり、その中に必ず濃い色のアルボンディガスがタレに浸かって置かれていました。これがたいていいける味でアルボンディガスが大好きになりました。少し酸味がきいたところはトマトで、赤ワインが使われていることも分かりました。
 スペインのバルはなかなか楽しいところで、小さなグラスで生ビール1杯あるいは赤ワイン1杯とtapaを一つとり、次から次にバルをはしごするのです。北東スペイン・バスク地方のフランス国境に近い海岸に面したSan Sebastian(サン・セバスティアン)という都市があり、フランコ時代には夏の間だけ中央政府の官庁が移転していたことがあるほどの綺麗な街ですが、この街の鉄道駅と海岸公園の間に50軒を越えるバルが密集する区画があり、そのバルの数の多さとバルに入ったときの品揃えの多さそしてその威勢がいい雰囲気はひとたび足を踏み入れると嬉しくなって時間のたつのを忘れさせます。
 マドリッドで最初に住んだpiso(ピソ、マンションのフラット)から歩いて2〜3分のごく近いところに5本フォークの高級レストランPríncipe de Viana(プリンシペ・デ・ビアナ、ビアナ王子)というナバラ料理店がありました。当時スペインではレストランの格付をフォークの数で表し5本フォークが最高位でした。5本フォークにしては広くなくバル部門のソファーが狭くて待ち合わせに不便なため私は2、3度しか利用したことがありませんが、料理の旨さではスペイン人の間で定評があり、ランチタイムは接待のビジネスランチ客ばかりでいつも混雑していました。スペイン人を接待するのにこのレストランを使ったときのことでした。メニューのメインディッシュにalbóndigas de ternera(アルボンディガス・デ・テルネラ、子牛肉の団子)があったので注文しました。アルボンディガスは巷のバルのイメージで高級レストランイにはいかにも不似合いに思えどんなものか興味があったのです。ナバラバスクの一部ですが、バスク系のレストランでは、スペインでは珍しくcamarero(カマレロ、ウェイター)でなくcamarera(カマレラ、ウェイトレス)が給仕します。カマレラが運んできたalbóndigas de terneraは真っ白な皿に盛られ、バルのようなこげ茶色ではなく白っぽいソースがかかっていました。料理酒は赤ワインでなく白ワイン系だったのです。フォーク・ナイフでその一つをカットして一切れを口に入れるとバルのものとは違う子牛肉の上品でこくがある肉のうま味が口中に広がり、その柔らかい食感も素晴らしく、これは最高のアルボンディガスだと思いました。ハンバーグもそうですが肉の良し悪しが味に大きく影響します。一流レストランのシェフとしてこの庶民的なテーマのアルボンディガスと向き合い、最高級の子牛肉をミンチにして使ったのでしょう。接待中で料理方法を聞くことはできなかったけれど、恐らく、Ternera のsolomillo(ソロミージョ、ヒレ肉)か、 lomo baja(ロモ・バハ、ロース/サーロイン)でも脂分が多く筋がある周りを取り除いた内側の赤身(子牛肉なのでピンク色)のやわらかい部分だけを用いたと思いました。サーロインのそのような贅沢な使い方を知っていたからです。ニューヨークの日本レストランでウェイターをしたとき、近くの食品スーパーへサーロインステーキ肉を毎日のように20パックも買いに行くのは私の役目でしたが、「牛肉の照焼」のオーダーが入ると料理長が内側の赤身部分だけをみりん醤油タレに浸けてから平行に並んだ鉄の角棒の網に乗せて焼いていました。外した周りをすべてゴミ箱に捨てるのには驚きましたが。世界の消費文明の頂点アメリカのニューヨークではこうなんだと威張ったそぶりで、当時まだガラス瓶入りのコカコーラなども半分飲んでそのままゴミ箱に捨てていました。貧しかった日本の感覚が抜けない私にはもったいないの思いだけでしたが。後日すぐにalbóndigas de terneraだけを目当てにまたこのレストランを利用しましたが、メニューがよく変わるらしくそのときはalbóndigas de terneraがなくてがっかりしました。Príncipe de Vianaでこのアルボンディガスの料理法を聞くことはできなかったのですが、あの味を頼りに研究してたどり着いたのが以下のレシピです。



--------------------------------------------------------♪ これはチュペイン料理だニャア〜 ♪
---------------------------------------------------------いちいちうるさい!おまえ猫か!♪♪ ↑ 



《Receta レシピ》
Albóndigas de wagyu:
和牛の肉団子

 子牛肉は日本では入手が難しいが、少し霜降りが入った和牛のやわらかいところをミンチにしてもらうと子牛肉には負けない旨いアルボンディガスができる。霜降和牛は高価なのでミンチにするのはどうも抵抗あり、まあそこまで行かなくともある程度いい肉を使ったほうが旨いアルボンディガスができる。
 ミンチ肉にすり卸したじゃがいもとパン粉を少し入れ、塩・コショウしてミルクを少し入れ手でよくかき混ぜ、ボール状に丸め皿の上に載せておく。フライパンにピュアオイルをたくさん入れ中強火で熱し170℃くらいで皿に載せた肉ボールを一つずつもう一度丸めながらオイルに順次入れていく。肉ボールは焦げないよう料理ばしで転がしながら揚げる。揚がったら皿に戻す。
 もう一つのフライパンにピュアオイルを入れ中火にしてみじん切りにしたにんにくとたまねぎを入れこんがり色がつくまでよく炒める。塩をふり白ぶどう酒か料理酒を入れ炒めながら、とろみをつけるため少しの小麦粉を水に溶いたものを加えよくかき混ぜる。そして揚げた肉ボールを入れよく馴染ませたら平皿に盛り上からタレをかける。

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