マドリッド日本語補習校

 私はマドリッドへ赴任すると、前任者が賃借りしていたpiso(ピソ、マンションのフラット)を引き継ぎ会社から車で5分程度の都心に住むことになりました。すぐ隣が大蔵省と工業省でReal Madrid(レアル・マドリッド)のホームスタジアムSantiago Bernabéu(サンティアゴ・ベルナベウ)が100メートルくらいのところにある新市街地の中心でした。3ヶ月遅れで家族が到着するとすぐに、ピソから歩いて5分のところにあったel Abeto(エル・アベト)と言う幼稚園へ長女3歳、長男1歳を伴い夫婦揃って園長先生に面会に行きましたが、若くて優しそうな園長先生と一緒にでてきたAna(アナ)と言う二十歳くらいの先生が緑色の瞳の超美人で、即、入園を決定しました。もちろん、雰囲気がすごくよかったし、歩いて5分という通園時間からして余程の問題がない限りこの幼稚園以外考えられなかったのですが。最大の恩恵を受けたのはうちの奥さんでした。幼稚園は昼食つきの朝10時から夕方5時までが定時で、この間育児から完全に解放されたのです。
 私たちがマドリッドへ来た少し前に日本人学校が開校し、毎土曜日は校舎の一部を借りて日本語補習校が開かれていました。マドリッドの北西方向la Coruña(ラ・コルーニャ)街道沿いの街外れにその日本人学校があり、ピソからは車でマドリッド旧市街を経由して30分余りかかりましたが、私たちは毎週土曜日子供たちを補習校へ連れて行きました。El Abeto卒園後もその隣手前にあったNuestra Señora María Virgen(ヌエストラ・セニョーラ・マリア・ビルヘン)という名の男女共学のcolegio(コレヒオ、小・中と高校の一部まで一貫教育)へ順次進学しましたので帰国までの約9年間補修校に通うことになりました。
 普段は送り届けた後一旦マドリッドへ戻り授業が終わるころに迎えに行く、送り迎えの形でしたが、うちの奥さんが補習校の役目分担でそのまま居残ることが多くなり、そんな時は私が一旦ピソに戻り、昼になると昼食のお弁当を作って引き返し二人でそれを食べるのが習慣となりました。和風中心で、ステーキ弁当や若鳥の生地焼き弁当、車海老天丼、スペイン風ではpepito de ternera(ペピート・デ・テルネラ)と呼ばれる薄めのステーキ用子牛肉を塩・コショウしてオリーブオイルで鉄板焼きしパンに挟んだだけのサンドイッチがいつも大好評でした。

《Receta レシピ》
Pepito de ternera:
ステーキ肉のサンドイッチ:

 スペインのbar(バル)でよく食べられる手軽な食べもの。Ternera(テルネラ)とは子牛の肉のことで豚肉のようなピンク色したやわらかい肉であるが、日本ではもっと大きく育ててから出荷されるので牛肉は赤身が普通。要はやわらかくて筋がない肉であればよく、本来はヒレ肉をイメージしたもの。しかし、最高に旨いものにしようと思えば値段は張るが脂身が入った1cmくらいの薄めに切った和牛のサーロインステーキ肉が最高である。これはpepito de “wagyu”と呼んだほうが適切かも知れないが。安価にするには豪州産のサーロインでも旨いが、脂身と筋は大胆に外したほうがいい。
 パンは肉の幅に合ったものがいいが、フランスパンのバケットが一般的で、1本を半分に切り、サンドイッチするためそれぞれ2枚に切りひらくと2個分のパン素材ができる。
 フライパンにバージンにオイルを敷き中強火にして塩・コショウした肉の両面を焼き、先ほど開いたパンに挟んで出来上がり。焼いた肉の熱と付着したバージンオイルでパンの内側がしっとりと柔らかくなり、簡単ではあるが、ハムサンドやホットドッグより遥かに旨い。