Costa Brava(コスタ・ブラバ)のリゾートホテル Almadraba Park Hotel


 地中海沿岸でバルセロナの北側からフランス国境にかけCosta Brava(コスタ・ブラバ)と呼ばれる海岸があります。海岸沿いの松並木が美しい上品なイメージのリゾート地帯です。スペインに赴任して最初の夏のvacaciones(バカシオネス、長期休暇)にコスタ・ブラバのRosas(ロサス)という町のホテルを予約し家族4人車で出かけました。スペイン人スタッフは夏場、6月中旬から9月中旬までの3ヶ月間の間に必ず4週間の休暇をとるのが通例で、ありがたいことに歴代のトップは日本人駐在員も2週間休むよう指導するのが慣わしでした。中産階級以上のスペイン人はファミリーで保養地に別荘を持つのが一般的で、奥さんと子供は3ヶ月の学校夏休み期間中別荘で過ごし、旦那はその間、毎土日と4週間のvacacionesに別荘へ行くのがよくあるスタイルです。家族がいない平日を単身都会で過ごす旦那はRodríguez(ロドリゲス)と呼ばれます。何と豊かな生活でしょう。「スペイン人はvacacionesのために働く」、とよく言われる所以です。当時、日本と比べ有給休暇の日数は同程度で、要は休暇を取るか取らないか、4週間まとめて取るかどうか、運用の違いだったのですが、今では有給休暇の日数でも相当差をつけられているようです。有給休暇について、日本以外のすべての先進国と多くの中進国では医師証明があれば病気休暇は有給休暇とは別枠である点も大きな差です。
 さて、Rosasのホテルに泊まってみて大問題があることに気づきました。海岸沿いの集落の中心部にホテルはあり、風通しが悪いのにエアコンがなく暑くて眠れないのです。とりわけ、うちの奥さんは夏に暑い部屋が大の苦手で、折角の休暇が台無しでした。その時、Rosasの町の海岸通りで偶然バルセロナにある取引先のひとに出くわしました。彼は船のオーナー側のエージェント会社の責任者、我々は船をチャーターして貨物を積む側で、彼らにとって我々は一応お客さんに当たりますが、不定期船はヤクザな世界で船積み時利害が衝突すること多く、押しが強い彼とは何度かやりあったことがあり、私の部下のスペイン人スタッフにも、「あいつはオーナー寄り過ぎる」、と評判が悪く、正直言って出会ってもあまり嬉しくない相手でした。
ところが、私たちのホテルの問題を知ると、彼は、「知り合いがこの近くにあるリゾートホテルの関係者なので掛け合ってみる」、と言って即行動し、紹介されたのがRosas郊外にある芝生張りのゆったりとし広い敷地に白い建物の4星ホテルAlmadraba Park Hotelでした。海水を利用したプールの10メートル位下は長いビーチが終わりちょうど岩場が始まるところで、階段を降りると岩場にもビーチにも行けました。強力なポンプで海水を汲み上げて循環させる海水プールは清潔で臨海感があり、前面すべてが地中海の見晴らしは最高でした。ハイシーズンの最中だったから彼は余程顔が利いたのでしょう。それでも取れたのは4〜5泊でしたが、親子4人が一緒に泊まれる小振りのスイートは心地よく快適で、昼間はプールサイドでゆっくり過ごし併設されたセルフサービスのレストランで昼食をとるのが毎日楽しみでした。夜はいつもパーティ形式のディナーで子供たちも気軽に入れちょっとしたアトラクションがいろいろあり毎夜がお祭りのようでした。近くにある古城は内部がカジノ&レストランに改造されていてここでのディナーも雰囲気があって素晴らしいものでした。当時まだ存命だったシュルレアリズムの天才画家Salvador Dalí(サルバドール・ダリ、1904/5/11-1989/1/23)の家がすぐ近くのFigueras(フィゲラス)にあり、その町のダリ劇場美術館も有名な観光スポットになっていました。
 プールサイドも含め食事はすべて美味しく価格は高くなく、長く滞在するとまんまるに太りそうでしたが、宿泊客はスペイン人よりもフランス人の方が多くその多くは毎年利用する常連客で、滞在期間は1ヶ月以上が普通でした。何でこんなに豪華でリッチな長い休暇をここの人たちは過ごせるのだろうと羨ましく感心させられましたが、うちの奥さんが日本にいる友人達に「地中海に落ちる夕陽が綺麗な」このホテルでのリゾートライフを率直に綴って絵葉書を何枚も出したところ、誰からも返事は来なかったようです。


《Receta レシピ》
 
Costa bravaやBarcelonaがあるカタルニア地方は料理が旨いことで定評がありますが、ここではすこぶる簡単でこの地方の代表的な食べ物、pan con tomate(パン・コン・トマテ)を紹介します。

Pan con tomate:
カタルニア風トマトとバージンオイル塗りパン:

パンは殻皮が厚くて大き目の田舎パンが適しているがどんなパンでも美味しくできる。例えば、パリジャンを2cm厚に輪切りする。スペインでは熟したトマトを二つに切りパンに押し付けるようにして塗り残りを捨てるが、皮をむきボールでよく押し潰したものをパンの上に塗ってもいい。できるだけ新鮮で熟したトマトが適している。後は、バージンオイルをかけ、塩を軽く振りかけるだけで出来上がり。好みにより、にんにくをおろしたものを塗ると絶妙な味わいになるが食べた後臭いが残る。