オリーバおじさんが広大な農園で屋外paella (パエジャ)作り

 El Ferrol(エル・フェロール)の電炉メーカーは丸棒の国内販売と首都圏の情報収集用にマドリッドに小さな出張所を設け、Julian Oliva(フリアン・オリーバ)という営業マンと女性秘書ひとりを置いていました。うちの家族がオリーバおじさんと呼んでいるフリアンは、色つき眼鏡をかけ、お腹が相当でた中年男で一見すると怖そうなのですが、これが飛びっきり心優しい好人物でした。あるとき、彼の営業先のお客さんに広大なfinca(フィンカ、農園)の地主がいて、マドリッドから車で2時間以上かかるところだけれど行くと大喜びで大歓迎されるから子供達を連れて遊びに行こうと誘われました。ランチは彼が現地でパエジャを作るということでした。
 フリアンの奥さんはイカツイ彼とは不釣合いなくらい上品でいつも微笑んでいるような優しい感じのひとで、二人を乗せた車の後を2時間以上ドライブしてそのフィンカと思われるところに着くと2本の石の柱の門だけがあり柵も何もなく、とにかく、門の向こう側の先ずっと見えない彼方までその地主の所有地ということでした。ポルトガルに近いCaceres(カセレス)県の近くか県境を入ったくらいのところでしたがドライブしてきた道の両側には草木以外何もない山野が延々と続くような枯れた土地でした。門を突き抜けてどんどん車で入っていくと住宅や建屋が見えてきました。人の良さそうな老夫婦がフィンカのオーナーで、喜んで出迎えてくれました。彼らは人手をあまりかけず所有地のごく一部を使い羊、山羊、鶏を飼い、羊のミルクでチーズも作っているとのことでした。孫が遊べるようバスケットボールの練習施設を作ってありましたが、息子さんたちの家族は遠いから殆ど来てくれないと嘆いていました。
 ペンダントがかわいい子山羊たちと遊んだあと、池には鯉がいるというのでみんなで鯉釣りをすることになりました。上品な感じのフリアンの奥さんは見ていただけですが、それ以外はみんな池の水の中に糸をたらして鯉釣りに挑戦したところ、うちの子供たちも釣れたのにフリアンだけが釣れません。しかし、最後の最後にフリアンの餌にも鯉が食いつきとうとう彼も鯉を釣り上げました。その瞬間、大柄のフリアンが大声で「ママー、ママー、鯉がつれた!」と叫んで奥さんを探して駆け出したのには驚きました。このときのフリアンの姿はいまでもうちの家族はみな覚えています。
 フリアンはとても器用には見えない人でしたが、薪をもってきてその上に鉄の脚を組みパエジャ鍋を乗せて屋外のパエジャ作りを始めました。奥さんは全然手伝わないで見ているだけでしたので私も手を出さないでいましたが、火加減の調整が難しい薪にも拘わらず不器用そうな手つきながら立派な見栄えのパエジャが出来上がりました。スペインでもアウトドアの料理は男が作るようです。フリアンもパエジャ作りの経験は相当積んでいたのかも知れませんが、家庭料理としてのパエジャが、料理とは無縁に見えるフリアンことオリーバおじさんのレベルにまで浸透していて、こんなに美味しいパエジャが作れるのだと感心しました。
 オーナーには羊のミルクで作ったチーズを熟成させるための小屋に案内されましたが、小屋の中の何段もある棚の上には所狭しと熟成を待つチーズが乗せられていて、帰り際にでき立てのチーズの大きな円盤状の塊を一つお土産にいただきました。オーナーがさりげなく選んだ一つでしたが、それはそれはこの上なく旨いチーズでビールや赤ワインの最高のつまみになりした。
 そんなわけで今日は私が作るわが家のパエジャの作り方を紹介します。パエジャの発祥地はスペイン東部バレンシア地方のAlbufera(アルブフェラ)の湿地帯とされていますが、いまやスペインの家庭料理で最もポピュラーな料理としてスペイン全土に浸透し、パエジャの中身の材料や作り方は地域や家庭により様々です。わが家のパエジャは鶏肉に海老・イカ・貝など海産物が入るpaella mixta(パエジャ・ミスタ、ミックスパエジャ)が基本です。パエジャ鍋はスペインから持ち帰ったステンレス製がありますが大きすぎるので、通常、東急ハンズで買った焦げ付かない加工をした3〜4人用のもの(直径約30cm)を使っています。パエジャは焦げた部分も美味しいのですが、焦げてくっつきやすい鍋だと調理しづらいので閉口します。

《Receta レシピ》
Paella mixta:
鶏肉と海産物入りパエジャ

《準備》
バージンオイル:米:だし汁のおおよその比率は1:3:6とする。
1. 米は洗わず、白くなるまで冷水に浸けておく。
2. だし汁は、車海老の剥きがらを入れた水を煮立てマギーブイヨンと味の素のコンソメチキンを加えてつくる。
3. Azafrán(アサフランサフラン)はぬるま湯に浸けておく(できれば小さなすり鉢にぬるま湯とサフランを入れ棒で摺っておく)。

4. 材料
(1) 赤と緑のピーマンは4つ切にして中の種をとる、モロッコインゲンは両端をカットして取り除き4つ切りにする、トマトは1cm幅に輪切り、にんにくとたまねぎはみじん切り、レモンは絞りやすいように赤道で2つ切り。
(2) 骨なしの鶏モモ肉1つを6つ切り程度にカット
(3) あさりは塩水に浸けて砂だししてからよく洗う、ヤリイカまたはスルメイカは内臓を取り表皮を剥き1cmに輪切りし、脚部分は中央の口を取り除き脚の吸盤を取り1本ずつに切る、車海老は殻を剥く(尾の部分を残してもいい)。
《調理》
1. パエジャ鍋にバージンオイルを半分入れ塩を少し振り中火にして鶏肉を皮の部分を下に置き、焼きめをつけてから裏返して焼き、だいたい火が通ったら料理皿に一旦取りだす。
2. 残りのバージンオイルを入れて中弱火にしてにんにくを入れ黄金色になる手前でたまねぎを入れよく炒め、中火にしてピーマンとモロッコインゲンを入れてかき混ぜながら軽く焼きめがつくまでいためトマトを加えて更に少し炒める。
3. 6の上に5の鶏肉を入れ、水をよく切って米を入れ油や材料とよく馴染ませたらだし汁とサフラン水を入れ、塩で味を調整してから強火にして沸騰させ、だし汁が少なくなるまで強火で煮る
4. だし汁が少なくなったら弱火にしてあさりとイカと車海老をのせてだし汁と馴染ませ、野菜を綺麗に配置直しして、時々鍋底の火が当たる面を移動させながら炊き上がるまで煮る。
5. 皿に盛りカットしたレモンを添える(レモン汁をたくさん絞って食べる)
〔スペインでもサフランは高いので家庭では食用のcolorante(コロランテ、着色料)を使うことがあるが、サフランの効能は色だけでなくむしろ香りにあるので是非サフランを使いたい。〕



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