スペイン電炉メーカーの人たちと日本へ出張

 ガリシアのel Ferrol(エル・フェロール)にある取引先の電炉メーカーが生産性改善のための技術導入を検討していて、神戸にある電炉メーカー専門の技術援助サービス会社から提案を受けその妥当性を判断するため神戸へ出張する予定にて、その前にいくつかの日本の電炉メーカーを訪問して技術的な意見交換をしたいとのことで協力の要請がありました。この電炉メーカーは私達の丸棒輸出の重要取引先で非常に親しい関係にあったので、私は彼らを連れて日本へ出張できるいいチャンスだと嬉しくなりました。一般的に日本メーカーは同業者の訪問には閉鎖的で、特に、スペインの電炉メーカーとは丸棒輸出において中近東で競合することもありスペインメーカーの訪問受け入れは容易なことではありませんでした。それでも、私の出身部であった東京本社の製鋼原料を取り扱う部署では多くの電炉メーカーと取引関係があるだけでなく一部資本参加している電炉メーカーもあったので、その出資先の電炉メーカーと高炉系の電炉メーカー1社の合計2社との技術ミーティングをセットしてくれました。2社とも東京圏のメーカーでした。
 訪日するメンバーは二代目社長のEnrique、その叔父で取締役のAndrés夫妻に工場長の4名と私、宿泊は東京3泊と大阪1泊に観光目的の京都1泊を加え1週間の旅程で、私にとっては親しい友達同然の連中と日本へ公費でいける最高に楽しい観光旅行のようなものでした。Enriqueは英語が話せましたが私のスペイン語のほうが上で、Andrésや工場長は英語が全然ダメだったこともあり技術ミーティングなどは私が得意分野なのですべて通訳し、あとは観光ガイド役を務めるだけの適度に気楽な仕事もある旅行でした。ホテルは私が指定して、東京は帝国ホテル、京都は畳の間を経験したいというので老舗旅館、関西は大阪ロイヤルホテルという豪華版にしました。帝国ホテルの朝食でEnriqueが日本のメロンが大変気に入り追加注文までするので、驚くほど高い請求が来るよと教えてやりましたが、3泊して毎朝メロンを注文していました。やはりオーナー社長だなと再認識させられました。
 東京に着いて翌朝、東京本社を案内してから、最初の訪問先の高炉系電炉メーカーへ行きましたが、私は付き合いがなかったメーカーで、工場へ到着すると工場長以下大勢が会議室で構えるように待っていて、質疑応答でも企業秘密で答えられないとの回答が多く少しギクシャクしたミーティングでした。工場見学も規制を加えられながらの短時間のものとなりました。一方、翌日訪問した出資先の電炉メーカーは、私が東京本社にいたとき国内スクラップ(鉄くず)で担当したことがある取引先で工場も何度か訪問したことがあり懐かしい面々がまだ何人か残っていました。親会社からの要請ということで対応もよくEnriqueたちにとって満足行く技術ミーティングとなりました。東京へ戻り、その夜は、私の先輩で電炉メーカーとのミーティングを手配してくれた室長が、ニューヨーク時代アメリカの鉄くず商談でスペインへ出張しEnriqueと面識があったことから私達の訪日を当初から歓迎してくれていて、会員制の高級クラブにディナーを招待してくれました。この先輩もエル・フェロールでEnriqueにcigalas(手長海老)をご馳走になっていたのでしょう。
 東京からは新幹線のグリーン車で京都へ行き、老舗旅館の和室に泊まりハイヤー2台を手配して清水寺金閣銀閣寺、平安神宮京都御所など名所見物をしたのですが、見物先のひとつで、Enriqueの工場から丸棒を輸出したことがあるエジプトのアレクサンドリアで建設工事をしていた日本の大手ゼネコンの担当者とその客先のエジプト人3人に偶然遭遇したのです。しかも、エル・フェロールの工場見学に私が案内したメンバーとまったく同じ人たちでした。こんな偶然があるものなのですね。そのあと、予定外の追加注文をもらったとか特別なことは何も起こらなかったのですが。
 神戸の技術援助サービス会社の社長は技術屋さんでしたが愛想が良い大変な商売人で、たまたま私が東京本社にいたとき取引関係があり懇意にしていた鉄鋼原料の規格外品を扱う商社社長の実兄でした。二人の社長は双子ではないのですが顔がそっくりでした。兄社長は私達を新神戸駅近くのものすごく高級そうな神戸牛の鉄板焼きレストランに接待してくれましたが、このとき食べた神戸牛ステーキは本場の最上級品で一番大きいサイズ、しかもロブスターつきの豪華番、素晴らしいディナーでした。私が通訳なので兄社長からも大変頼りにされ、気楽で最高の雰囲気でもありました。
大阪のホテルには、私が学生時代アルバイトしたことがあるレストランの姉妹店が入っていてそのママさんたちと古い知り合いで顔がきいたのですが、当然のようにEnriqueの勘定で彼らを案内しました。鰻料理でしたがスペインでもウナギを食べるので抵抗はなくすべて特上のものを注文し全員大満足でした。そして、私の実家はタクシーで30分くらいのところだったので、夕食後、スペインのお土産を持ってちょこっと顔を出すこともできました。まあ、こんなに気楽で豪華版の日本観光出張も、長期に駐在して一度くらいあっても罰(バチ)は当たらないかなと思ったりしましたが、逆に、スペインへ帰国後、Andrésは私に大変世話になったと、Enriqueを伴い夫妻でマドリッドまででてきて最高級のレストランに招待してくれ、特注で私宛の礼文を彫った大きな銀のお盆を持参しプレゼントしてくれました。
 Enriqueの日本出張の成果というか結末ですが、その後一度技術援助サービス会社の社長がエル・フェロールを訪れ(私も通訳を頼まれ同行)、神戸ミーティングの結果を踏まえた再提案を行いましたが、結局、Enriqueは東京本社出資先である電炉メーカーの誠実さが気に入りその技術者1名による3ヶ月程度の簡単な技術指導を受けることになりました。因みに、このときは、Enrique側の費用負担でスペイン在住の日本人通訳を雇い、私が電炉製鋼に関する技術用語の簡単なマニュアルを作ってあげ対応してもらいました。


♪ あ〜ぁ、だれもこない、ねむくなってきた ♪

ココ!そんなところでアレやっても、みなさん評判の朝食に並んでいるので誰も来てくれないよ ♪♪







♪ えっ、そうなの? ちょっとだけきてかわいがってくれてもいいのになあ ♪











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