高級ホテルEurobuilding(エウロブイルディング)とMelía Castilla(メリア・カスティージャ)

 私たちがマドリッドで最初と最後に住んでいたpiso(ピソ、マンションのフラット)から歩いて10分もかからないところにEurobuilding(エウロブイルディング)とMelía Castilla(メリア・カスティージャ)という2つの高級ホテルがありました。因みに、私たちがマドリッドにいたころは、Eurobuildingが5つ星でMelía Castillaが4つ星でしたが、今は逆転しているようです。観光目的のVIPの場合には、旧市街、プラド美術館隣の、5つ星でも最も格式が高いHotel Ritz(オテル・リッツ)を利用しましたが、業務目的の出張者の場合は会社にも比較的近いこの2つのホテルをよく予約しました。そんな関係で、私は前任者からEurobuilding屋上プールの招待カードを引き継ぎ、夏になるとうちの奥さんが子供たちを連れてよく利用しました。私も家族といっしょに何度か利用しましたが、施設も来場者も全体的に高級感があり、プールサイドの長いすに横になりプールで遊ぶ子供たちを眺めながらサイドテーブルに運んでくれるドリンクやbocadillo(ボカディージョ、生ハムなどをはさんだパン)を口にしてマドリッドの乾燥した暑い夏の午後をゆったり過ごすのは最高の気分でした。このサマーライフが、うちの奥さんができるだけマドリッドに長くいたかった主要な理由の一つだったと思います。
 スペインにはJornada intensiva(ホルナダ・インテンシバ)という制度があり、多くの会社が採用していて、うちの会社の場合、夏の3ヶ月間、朝9時スタートは同じで、そのまま昼休みなしに午後3時まで働きあとはフリーという仕組みです。イラクなど砂漠の国では一年中この様な勤務時間があるようです。マドリッドも夏は高温で乾燥していてまさに砂漠です。スペイン人スタッフは殆ど100%この制度を利用していましたが、日本人駐在員は、日本からのお客さんの対応や、関係するロンドン店など欧州各店からの電話対応もありあまり利用していない状態でした。それでも、夏になると午後3時以降はオフィス内のひと気がぐっと少なくなり、普段でも時間的自由度は高いのですが、とりわけこの時期は時には気楽にオフにして帰宅したりEurobuildingの屋上プールで家族にジョインしたりしました。

 Melía CastillaにはScalá Melía Castilla(スカラ・メリア・カスティージャ)というショーレストランの部門が併設されていて、着飾ってインターナショナルなショーが観れるちょっと華やかな場所でした。ディナーとショーだと9時からで、ショーだけだと10時15分から始まる夜の世界。うちの子供たちはお土産を約束すると二人仲良く二段ベッドでおとなしく眠ってくれるようになっていたので、時にはこういうディナーショーにも出かけることができました。アイススケートショーにも切り替えができる立派な設備の舞台で、そのすぐ前のテーブルでディナーをとり、デザート&カフェがでるころ、歌とダンス、アイススケートのアトラクション、スペイン風お笑いなどインターナショナルショーが始まりました。
 ホテル部門は1,000室の大ホテルで、東京の大ホテルのように地階や一階の一部にはいろいろなレストランが入居していて、その中にパエジャ発祥の地を店名にしたl’Albufera(ラルブフェラ)というpaella(パエジャ)レストランがあり、私はそのレストランのパエジャがマドリッドで一番だと思いました。日本人には芯が残ったご飯は出来そこないで抵抗感がありますが、たっぷりのバージンオイルで肉や魚介類を炒め、トマトやインゲンなどの野菜を入れて炒め、その上で水を入れ塩を加えてしっかりとだし汁を作った上で米を洗わず入れて作るのでどうしても芯が残る感じになります。しかし、食べ慣れると油っけが多いパエジャにはこのご飯のコシが丁度良く、日本風の柔らかいパエジャだと逆に出来そこないに思えてきます。私は更にコシを求め、水を加える前に米を入れ、肉・魚介類・野菜の旨みがしみ込んだ油に米をよく馴染ませてから水を入れる作り方もいいと思っているくらいです。パエジャのオリジンはオレンジの産地として有名な地中海岸のValencia(バレンシア)、具体的にはAlbufera(アルブフェラ)の湿地帯とされていますすが、スペイン全土に広まったスペイン庶民の間で最も親しまれている料理です。本来パエジャはオレンジの木の薪を燃やしてその上方にパエジャなべを置いて作られ、オレンジの木のスモーク感を加えて作られていた様です。パエジャの種類と作り方はバリエーションが豊富で、鶏肉とウサギ肉をベースとしたpaella valenciana(パエジャ・バレンシアナ)、海産物主体のpaella de marisco(パエジャ・デ・マリスコ)、肉と海産物ミックスのpaella mixta(パエジャ・ミスタ)の代表的なものに加え、イカ墨を入れた真っ黒なarroz negro(アロス・ネグロ)、リゾットのようにスープ風にしたsopa de paella(ソパ・デ・パエジャ)など様々です。