アンダルシア風の海産物レストラン

 スペインで海産物レストランというと、ポルトガルの北側、ガリシア地方の料理店が中心ですが、アンダルシア風の海産物レストランもあります。一般にはアンダルシア風はフライ物が中心の庶民的なイメージで、アンダルシア州のSevilla (セビージャ、セビリア)などには立ち飲み式で食べかすやら何でもどんどん床に捨てる方式の楽しいバルがたくさんありますが、マドリッドに1軒、la Dorada(ラ・ドラダ)という、通りに面した外観から船をデザインした高級アンダルシア海産物レストランがあります。立派な船室のインテリアで長いカウンターがあるバル部門と個室をいくつも備えたレストラン部門があり、各種貝の塩茹で、boquerones(ボケロネス、片口いわし)やcalamares(カラマレス、ヤリイカ)あるいは小魚のfritos(フリートス、フライ物)、海老・蟹類や魚類のa la plancha(ア・ラ・プランチャ鉄板焼き)・a la parrilla(ア・ラ・パリージャ、網焼き)に、名物料理としてdorada(ドラダ、鯛の一種)、lubina(ルビーナ、スズキ)、lenguado(レングアド、舌平目)などのa la sal(ア・ラ・サル)といって、日本の塩蒸しのように厚く荒塩でくるんで焼く料理があり、庶民的なアンダルシア料理で高級レストランを演出している感じがします。
マドリッドの暑い夏には、気心の知れた友人や家族とla Doradaのバルに入り、jamón ibérico(ハモン・イベリコ、イベリア豚の生ハム)とboquerones fritos(ボケロネス・フリトス、片口いわしのから揚げ)をつまみに生ビールを2、3杯飲むのもいいものです。
 飛行機ではマラガ空港まで行き、Costa del Sol(コスタ・デル・ソル、太陽の海岸)沿いに西へ車で30分くらい行くとMarbella(マルベージャ)があり、その街並みを通り過ぎるとすぐ左手、海岸側に数え切れないくらいたくさんの豪華クルーザーが係留してあるPuerto Banús(プエルト・バヌス)という高級ショッピング街やレストラン街を併設した大規模マリーナがあり、その右手には闘牛場とカジノがあってその背後に4つのゴルフ場をベースとした別荘地帯が広がります。私はそのうちの一つのゴルフ場内別荘の日本人向け販売に従事したことがあり、販売期間中は多いときはマドリッドから日帰りまたは1泊程度で週に3度も出張することがありました。プエルト・バヌスの少し手前に、ここにもマドリッドよりも高級感あるla Doradaがありました。お客さんを連れてよくマルベージャのla Doradaを利用しましたが、そのときの第一の目当てはChipirones en su tinta(チピロネス・エン・ス・ティンタ、ほたるイカの墨焼き)でしたが、いい材料が入らないとメニューに載らないので、あったときは嬉しくなり自信を持って必ず注文しました。そしてメインはdorada(ドラダ、鯛の一種)かlubina(ルビナ、すずき)のa la sal(ア・ラ・サル、塩蒸し)で、テーブル脇にワゴンで運ばれてきて周りの塩をダイナミックに割り皮を綺麗に剥がし、そして骨を取って食べやすい中身だけを皿に盛るという演出があります。厚く塩をかぶせて焼かれていますが皮が遮断して塩気は薄く醤油が欲しくなるくらいです。私はこの店ではすぐに常連になっていたのでウェイターに頼んでお客さん用にキッコーマン醤油を置いてもらっていました。利用し始めて2年くらいで閉店となったときは本当に残念でした。導線が悪く少し人目につきにくい立地が問題だったかも知れません。いつも予約なしではいれました。